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マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ / 古内一絵

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アトリエM_こばやしいちこによるブックインスピレーションエッセイ。たくさん読んだ本の中から一冊をフィーチャーしながらオリジナルエッセイを届けます。

マカン・マラン 二十三時の夜食カフェ / 古内一絵

路地裏で、昼間は、手作りで特注の一点物のド派手なドレスや小物を扱うファッション店として営業していて、夜だけカフェとして、ひっそりと開く、「マカン・マラン」。店主は元エリートサラリーマンで、現在はドラァグクイーンとして生きるシャール。
最初はカフェではなかったのだ。昼間のファッション店の商品が、あまりに人気で、シャール1人では作り切れないので、手先の器用な妹分たちが、昼間の本業の仕事を終えて、夜、作りに来てくれる。彼女たちをねぎらうために、賄いを作って出していたのだが、服を買いに来るお客さんや、知り合いにも出しているうちに、なぜだか賄いの方に常連がついてしまい、知る人ぞ知る、カフェになってしまったのだ。
そんな夜のお店を訪れるのは、それぞれに悩みや問題、孤独を抱えた人たち。シャールは訪れる彼ら彼女らの心にそっと寄り添い、それぞれにぴったりのお料理を作ってあげるのだ。湯気の立つキャセロール、香ばしいパン、彩り豊かなサラダ・・・・・・甘やかすわけでなく、時には厳しく、でも的確なアドバイスともなる言葉をくれる店主のいるこのカフェは、店主のシャールにとっても、訪れる傷ついたお客にとっても、大切なお店。
シャール自身も様々な問題を抱えているが、優しく厳しい彼女の周りには、彼女を守りたい、助けたいと願う人が集まって来る。

1話ごとに物語が完結するので読みやすく、それでいて登場人物たちが少しずつつながっていく連作短編集ならではの楽しさもある。

何年も前、一時、友人がパートナーと2人で小さな居酒屋を経営していたことがある。今はもうやめてしまったのだが、当時は何回かお邪魔したものだ。
引き戸を開けてお店に入るのだが、途中まで、シャッターが閉まっている。お店の看板も出していない。だから、知らない人は、そこが、入って飲み食いできる場所だとは思わない。知る人ぞ知る名店!を目指していたのではなく、どうやら、飲食店をやるにあたってのあれやこれやの届けを出していない部分があって、大っぴらに商売できない状態だったらしい。
でも私は、なんだかいつもワクワクした。それこそ、秘密の隠れ家っぽくて、
「入るときは、周囲に気を付けてこそっと入ってね!」
って言われていて、それもお気に入りポイント。なんだかCIAの本部に入るときのような気分で、ササっと入った(笑)。
得意になって、いろんな友人を連れて行ったもんだ。
中に入ると、4、5人も座るといっぱいのカウンターと、小さなテーブルが1つ、2つ。カウンターの中では、おでんがいつも煮えていた。
店主も友人だし、訪れるお客さんも店主の知り合いばかりの小さな店内は、いつも和気あいあい。楽しくて美味しくて、お酒も肴も進んでしまい、

「もう! あんたが来ると、冷蔵庫が空っぽになっちゃうよ! まだ、なんか、食べる? 飲む? あ、赤ワインがあるわ。パルミジャーノなら、切れるよ。」
なんて、冗談っぽく怒られながら、彼女の店を空っぽにして、ご機嫌で帰った。

あ~あ、気の置けない友人の誰かが、また、楽しいお店を開店しないかなあ・・・・・・

文と写真・こばやしいちこ

小さな頃から本が好き
映画が好き
美味しいものが好き
おせっかいに人に勧めたがり
愛犬・さくら(黒のトイプードル)を溺愛しながら、
毎日なにかしら本を読んでいます。

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