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未知との遭遇、ある料理について

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日常の中から、エンタメを整理収納目線、暮らしをエンタメ目線でつづります。栗原のエッ
セイ、つまりクリッセイ。

先日、母方の伯母やいとこと会する機会があった。
かなりお久しぶりで会う人もおり、改めて月日の流れを実感した。

私が子どもの頃は、毎年、正月2日に母方の親族一同が集まるのが恒例だった。
父の運転に車酔いしながらたどり着き、着いてしばらくはかなり大人しく過ごしていたな
なんていうことなど、細かいことを断片的にではあるが覚えている。

その日、お昼ご飯を一緒にいただきながら、あれこれ近況を報告しあいつつ、懐かしい話にもなる。
やはり正月2日の話だ。
いとこのおにいさんが、その時食べた忘れられない料理の話を切り出してくれた。
それは伯母が作る「鶏肉の赤ワイン煮込み」。
それが衝撃的に美味しかったという話だ。

実はこのメニューについては、私と兄たちとの間でも鮮明に記憶していたもので、よく話に登場していた。
「鶏肉の赤ワイン煮込み」
「コック オ ヴァンのことだね」
伯母の娘である同い年のいとこが言う。
そうだ、たしか当時もそのカタカナの料理名を耳にしていたけれど、ついぞ覚えることは出来ず、ただただ「鶏肉の赤ワイン煮込み」で料理名も味もインプットされて今に至るのだ。

まずもって、当時幼稚園生か小学生の私や兄らにとっては、「赤ワインなんて子どもなのにいいの?」という素朴な疑問があった。
鶏肉と言ったら、しょうゆと砂糖とみりんで甘辛くした手羽先の煮込みくらいしかイメージがなかった私たちの前に出されたそれは、ちょっと黒っぽくて、見慣れない手羽元だった。
「やわらかいから骨まで食べられるわよ」と伯母に言われ、
たぶん、意味がわからなかったと思う。
けれど、いざ口に入れたら、本当に柔らかくてほろほろと身が崩れて、本当に骨まで食べられた。
あまりの美味しさに「なんじゃこりゃ!」と夢中で食べたことを記憶している。
当時、圧力鍋で調理されたということも耳にしていたようだが、
自宅にないものはすべて未知のもの。
横文字の料理名も圧力鍋も一気に「憧れ」の象徴になった。
このメニューは数回にわたって振る舞われたと記憶している。

……と、ここまでの感想がほぼいとこのお兄さんと一緒だったため、
興奮気味で相槌を打っていた私。ここに私の兄たちもいたら、皆、同じように首をぶんぶん振っただろう。

それから月日はめぐり、我が家にも圧力鍋がやってきたことがあったし、
手羽先以外に若鶏手羽元の煮込みも作ったことはあった。
でもあの衝撃の「鶏肉の赤ワイン煮込み」はやっぱり我が家では口に出来ていない。

お店でコック オ ヴァンを食べたことがあるかもしれない。
でもあの衝撃の「鶏肉の赤ワイン煮込み」ではないのだ。

この記憶が軽く40年前くらいの話であることに気づいて、
また別の衝撃を受けたことは言うまでもない。