歌舞伎をほぼ毎月楽しんでいる60代男性。毎月観るために、座席はいつも三階席。
印象に残った場面や役者さんについて書いています。
今月は夜の部のみの観劇となりました。年に一度の團菊祭、市川團十郎と尾上菊五郎という歌舞伎界を代表する名優の共演です。
昨年は、勧進帳で、團十郎の弁慶、菊五郎の富樫という、これ以上ないキャスティングでしたが、今年も負けてはいません。
「二、助六由縁江戸桜(すけろくゆかりのえどざくら)」
歌舞伎十八番に入っている有名な演目です。主人公の花川戸助六を市川團十郎さん、
傾城 揚巻を八代目尾上菊五郎さんが演じます。敵役 髭の意休を演じるのが市川男女蔵さん。四世市川左團次さんの息子さんです。
舞台は、口上から始まります。
市川新之助さんが一人で登場しました。昨年よりも背も高くなり、イケメンぶりは相も変わらず、立派に口上を務めあげられました。
傾城 揚巻は、江戸吉原の遊郭 三浦屋の最上位の人気を誇る傾城です。
「傾城」とは、国を滅ぼすくらいの絶世の美女という意味。しかも、いろいろな芸事にも秀でたスーパーウーマンですので、「気品」が普通の所作からにじみ出るようでなければなりません。
私が初めて揚巻をみたのは、坂東玉三郎さんが演じられたときでしたが、八代目尾上菊五郎さんも負けてはいません。何人ものお付の者たちとの花魁道中の登場となりますが、貫禄もあり、品もありといった感じが伝わってきます。セリフはないですが、圧倒されます。
最初の場面では、揚巻の上客 髭の意休が揚巻に相手にされないので、間夫(まぶ)の花川戸助六を口汚くののしると、我慢しきれなくなった揚巻が、髭の意休に悪態をつきます。最後には
「お前の相手なんかしない。斬れるものなら斬ってみろ」と、店から出て行ってしまいます。菊五郎さんの、啖呵を切る、セリフの言い回しが最高です。
その後、仲間の傾城の白玉から「助六に災いが及ぶからその辺にしときなさい」ととりなされ、店に戻っていきます。この場面、白玉役は中村時蔵さん。お二人は音羽屋一門で長く一緒に共演されているので、本当の仕事仲間を思って、説き伏せているようで勝手に感動してジーンとしました。
相手のためを思って、諭してくれる存在、貴重ですよね。
続いて、江戸一番の伊達男、花川戸助六の登場です。登場すると、傾城たちが助六に殺到して、次々と吸い付け煙草を差し出します。
「私が火を付けた煙草をぜひ吸ってちょうだい」ということなのでしょう。助六は、10本くらいのキセルを両手で抱えます。助六のモテモテぶりを表現するのに團十郎さんのビジュアルほどふさわしい人はいないですね。
その場にいた髭の意休も、煙草をねだりますが、傾城たちは相手にしません。
助六が分けてやるといって、足の指にキセルを挟んで、意休の前に差し出します。挑発です。その後も下駄を、意休の頭の上にのせて挑発を続けます。
ずいぶんな行いですが、この場面、助六が実は曽我五郎で、源氏の重宝、名刀 友切丸を詮索するため、手あたり次第に喧嘩を吹っ掛け、刀を抜かせるという裏があるのです。
曽我物で有名な兄の曽我十郎も、酒売りの新兵衛として登場します。弟の悪い噂を聞いて心配してきましたが、友切丸詮索のため喧嘩を吹っ掛けていると知ると、じゃ俺も参加するといって通行人に二人でからみ始めます。有名な「股ぁくぐれぇ」とすごむ場面です。
2時間近くの長い舞台なので、ここは若干ブレイクタイムのような場面であります。
通人 里暁として尾上右近さんが登場。歌舞伎あるあるで、アドリブセリフっぽい場面で盛り上げてくれました。
「團十郎によく似ている」とか、「自分が連獅子の子獅子を初めてやった時に、親獅子やってくれてありがとう」などと客を笑わせるセリフをたくさん言ったかと思えば、股をくぐる前には、連獅子の獅子の精のような動きをしたり、女形の役者さんがよくやる立膝から上体を後ろにそらしたりと、サービス満点。たくさん笑わせてくれました。
退場の際にも花道で、「今月は尾上辰之助さんの襲名おめでとう」とか「右近左近でよく一緒にやった」なんてこともおっしゃって、短い登場時間の割にかなりのインパクトを残していました。
ブレイクタイムといえば、今回、舞台の下手側の壁に「竹村伊勢」という文字がありました。これは江戸時代、遊郭・吉原に実際にあった菓子舗の名前です。「最中の月」や「巻せんべい」が有名だったそう。前述の助六が、最初に髭の意休にからむ際、意休の手下の朝顔仙平が「俺の家族の〇〇は、○○せんべい」などと言いながら登場しました。これはつまり、生CMですね。スポンサーだったりしたのでしょうか。こうした昔のスタイルを取り入れているのも面白いです。
最後の場面では、助六、意休、揚巻の三人で立ち廻りとなります。
見栄をした時は、三人とも格好良く、見事に決まっていてとっても素敵でした。
お芝居を振り返って感じたことといえば、
一、傾城が多く出てくるお話は、まず衣装がきらびやかで、錦絵を見ているよう。衣装を見ているだけで素敵な気分になります。これは老若男女、もちろん外国の方も見ればそう感じるのではないでしょうか。
二、助六、揚巻がかっこいいのは当然として、意休を演じた市川男女蔵さんが、團菊のお二人に位負けすることなく、敵役、悪の大物を貫禄ある様子で、かつ御父上そっくりの、だみ声(?)で見事に演じきっていたのが印象的でした。
今回、いつも利用しているイヤホンガイドを使わず、自分の目と耳だけで観劇しました。
より舞台に集中して観劇できたと思います。
歌舞伎を観始めて10年以上も経つので、ストーリーを知っている演目については自分の目と耳だけで観劇しようかな、そんなことも思った五月の團菊祭。
とても楽しい演目でした。
六月は「子連れ狼」なんて演目もあるそうですヨ!
この先の演目は歌舞伎座のHPでCHECK!!

